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漱石は「不可思議」に人間の心の闇を映し出し、太宰は「自業自得」に恋の女神の傲慢さを凝縮した。鴎外は「危急存亡」によって『三国志』の英雄と響き合い、芥川は「人面獣心」によって『列子』の人間観と結びつく。近代日本文学における文章の名手たちは、どの場面で、どのように四字熟語を使ったのか―。小説で使われた四字熟語にスポットを当てる新しい試み。
目次 :第1章 日本語としての四字熟語(「連戦連勝」と時代の空気―司馬遼太郎『坂の上の雲』;「自由自在」と満たされぬ想い―江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』 ほか);第2章 四字熟語で立ち止まる(「悪事千里」と世間の眼―樋口一葉『大つごもり』;「不可思議」と苦しき戦い―夏目漱石『こころ』 ほか);第3章 四字熟語を使う作家、使わぬ作家(「電光石火」と人間のさだめ―北杜夫『楡家の人びと』;「旧態依然」と大正モダンガール―有吉佐和子『紀ノ川』 ほか);第4章 二重映しの物語(「危急存亡」と明治の青年―森鴎外『舞姫』;「青山流水」と若き日の放蕩―永井荷風『あめりか物語』 ほか)
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