この商品の詳細
- 出版社
- 洛北出版
- 出版社シリーズ
- ISBN
- 4903127385
- サイズ
- 単行本
- 発売年月日
- 2026年03月01日
この商品の紹介
――いま必要なのは、「しっかりがんばる」とは別のあり方である。
活躍、個別最適化、共助を「楽しむ」ようすすめる今日の社会は、「稼〔かせ〕げる」能力を日々バージョンアップするよう、個人にはたらきかけている。更新できなければ、自立支援や学習支援などのケアを受けるよう、データ化を通して、個人に迫る。
「私」は、この価値観を内面化し、他人にも押しつけはじめ、自責他害をさらに強めて、ケアの争奪戦に駆り立てられる。
今日の社会、すなわち後期新自由主義の体制は、第一に、経済成長期の命令型の訓練と管理から、個別最適に学習する自発的な自己調整へのバージョンアップを特徴とする。
第二に、このバージョンアップからはじかれる人々に対しては、市民や地域が国家に代わって支援する「ケア」への注目がある。
たとえば、組織や制度の内部に、はじかれた「ヤングケアラー」の「声を聞く」相談窓口が設置されたり、その業務がNPOに委託〔いたく〕されている。
もちろん、今まさに困っている子どもを支えなければならない状況は、あちこちにある。
けれども、困っている子どもを支援するという真摯〔しんし〕な姿勢は、ともすれば、どんな関わり方をすればよいのかという、方法やマナーの問題に手順化されがちでもある。
保護者も、教師やケアワーカーや研究者も、方法や関わり方に傾注するあまり、その子どもの問題を直接に間接に形づくる社会経済的な構造を問うあり方――日常的抵抗――から遠ざかってしまう。ケアや支援でなんとかしていくほうがてっとりばやい、という考え方が優勢になり、社会問題は個人化されていく――「あなたが、私が、しっかりがんばらなきゃ!」
しかも構造的な問題を問うても周囲から煙たがられるため、稼いで豊かになって困難や困窮を乗り越えるという思考パターンにいっそう染まっていく。稼げない日本になっても、あるいはなったからよけいに、この発想は強化される。
こうして、既存の社会構造はそのままに、ケアや支援は、現場の当事者たちによる関係性や手法で完結してしまうのである。
本書は、ケアや支援がいかに便利使いされ、そこに教育や福祉の業界はどのように加担し、加担させられているかについて、まずは歴史的に把握する。そのうえで、「稼げる個人」とは別のあり方と自由について、アナキズムや政治思想史の知見、各地で行なわれている実際の取り組みなどを紹介しながら、素描を試みる。
「〈われわれ〉を構築する後期新自由主義の力学は、全体性に吸い込む精神統治である。〔…〕能力や開発の賛美に従わない、という重要な日常的抵抗が、〈われわれ〉にはできる。」
――この本は、「稼げる個人」とは別の、存在の自由への招待状である。
日常的抵抗への招待/単行本