この商品の詳細
- 出版社
- メノキ書房
- 出版社シリーズ
- ISBN
- 9784910948003
- サイズ
- 単行本
- 発売年月日
- 2022年07月28日
この商品の紹介
みる、ってなんだろう みえる、ってどんなこと? いま あたしの めのまえには ひかりがあるだけ
みる、って みえる、ってなあに?
まえは 木をほって ぶつぞうを つくっていたよ お母さん お父さん おばあさん おじいさん こども おいしゃさんも ほった みんなのこころを ほって いたよ
花も 犬も 猫も なめくじも ほった あたしのまわりにいる たましいを ほった
木のちょうこくを していたあたし ちょうこくか が あたし
このときまでは すべてが みえていたよ 山も海も 木も花も 犬も猫も お母さんのかおも お父さんの手も こどものえがおも たいせつなひとのなみだも みんな みんな みえていた
じゅうねん にじゅうねん 木をほっていた あたし
でも だんだん だんだん せかいが くらくなってきた じぶんのせかいが うすくなってきた
そして あるあさ めのまえは ひかりだけになった
あたしは 木をてばなした ほるどうぐを たなに しまった
さあて どうしよう
木はほれなくなった けれど あたしはあたし みえなくなった けれど あたしはあたし あたしは ちょうこくか
せかいにあふれる たましいを あたしの手で かたちにしたい
でも、 どうしたらいいの?
おもいだした こどものころ どろだんご つくった どろをこねて 手でまるめて
かためて みがいた つるつるにみがいた ぴかぴかに みがいた
きもちよかった
ほこらしかった
ねんどで だんごをつくってみた たのしかった
ねんどは やわらかい ねんどは どんなかたちもつくれる いくらでも つくれる ねんどは こころを いれやすい
ねんどで しじみを つくった おおきい しじみは パパとママ 小さい しじみは こども しじみのかぞくが できた
たのしかった
ねんどで やかんも つくった おおきい やかんを つくった
さわったら あつくそうだね
おゆが おいしくなりそうだね
やかんをみたひとが そういった
ねんどのやかんが たましいを もった
みえなくなった あたし だけど だれかの てだすけが あれば いままでどおり あたしは あるくことができる だから かわいそうだ と おもわないで
木をほっていた あたし ねんどで すきなかたちを つくるようになった あたし
つくりおわった きもちは おなじ つくりたくなる きもちも おなじ たましいは おなじ
みえていたときのかたち みえなくなってからのかたち どちらもおなじ どちらもあたしじしん
みえなくても みえるんだよ こころで みているよ
ねえ みる、ってなんだろう みえる、ってどんなこと?
あたしは みえなくなった ちょうこくか
みえなくなったちょうこくか/単行本