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『人間知性新論』におけるフィラレートとテオフィルの仮空の対話は、ありえなかったロックとライプニッツとの対話篇である。それは、経験論と合理論の二つの哲学的伝統の最も偉大な魂の間で交わされる対話に他ならない。ライプニッツは、1690年に刊行されたロックの『人間知性論』に接し、この書から深い印象を受けた。そしてこれに続く年月をその認識論との対決のために費す。かくして1703年、ロックへの批判的論拠を対話形式で展開したライプニッツの認識論にかんする最も重要な著作『人間知性新論』が、完成した。魂はタブラ・ラサ(何も書かれてない板)ではない。魂はその本来の内容、本有的概念をもつという“モナド論”的に把握された魂の形而上学的考察に始まり、観念・言葉・真理・認識という主題をめぐり、ライプニッツの哲学が、自由に鮮明に語られる。この書の影響は、カントのいわゆるコペルニクス的転回から、現代ではチョムスキーの言語理論にまで及んでいる。近代以降の人間中心の世界観に対する反省から、自然と神と人間とが微妙な調和を保っていた“バロックの哲学者”の精神が今よみがえる。それは、世界観全体の重心の移動の可能性すら秘めて、混迷する思想界に一つの方向を指し示すであろう
目次 :1 本有的概念について(人間の精神の内に本有的原理があるかどうかについて;本有的であるような実践の原理は全く存在しないということ ほか);2 観念について(観念一般が論じられ、人間の魂が常に思惟しているかどうかが折りに触れて検討される;単純観念について ほか);3 言葉について(言葉ないし言語について;言葉の意味について ほか);4 認識について(認識一般について;私たちの認識の程度について ほか)
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