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無限とは何かという問題は2500年にわたり人類にとって深い謎であった。19世紀末にドイツの数学者ゲオルグ・カントールは、集合論によって無限に新たな解釈を与えた。同時に様々な矛盾の存在が明らかになり、数学者達は進展をとげるには厳しい状況に置かれた。この無限についてフランスの数学者(ボレル、ベール、ルベーグ)はデカルト的な合理的解釈を試みたのに対し、モスクワ数学派は「讃名派」の教えに関連する神秘的で直観に基づいた解釈を試み、独自の進展をとげた。本書は、20世紀初頭に無限と集合論に挑んだ数学者、特にロシアの数学者を中心に描いている。数学的対象に対する解釈をフランスの数学者と対比させることで、モスクワ数学派の無限や連続性、集合に対する解釈の独自性が明確になっている。著者らは本書の執筆にあたり綿密な調査をおこない、あまり知られていない20世紀前半におけるモスクワの数学者達の活躍や苦悩、生涯を、共産主義による制圧といった当時の時代背景や思想との関わりを含めて詳述している。数学だけでなく、思想や歴史に興味のある方も楽しめる一冊である。
目次 :第1章 修道院襲撃事件;第2章 数学の危機;第3章 フランスのトリオ―ボレル、ルベーグ、ベール;第4章 ロシアのトリオ―エゴロフ、ルジン、フロレンスキー;第5章 ロシアにおける数学と神秘主義;第6章 伝説的なルシタニア;第7章 ロシアのトリオの運命;第8章 ルシタニアのその後;第9章 数学における人間過去、そして現在;補遺 ルジンの個人的な文書
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