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アイルランドは、ヨーロッパのなかにありながら大西洋に面したその周辺として、9世紀以降、その時々の中心的勢力の余波が押し寄せる場となってきた。中世のヴァイキングの侵入と定住にはじまり、ブリテン帝国の形成過程における質の異なる植民、連合王国への組み込み、そこからの離脱と脱植民地化というアイルランドの歴史は、まさに“ネイション・ステイト”との格闘でもあった。本書は、中世から現代にいたるアイルランドの経験について、歴史学、経済学、社会学、政治学、文学など多様な分野の専門家が切り込み、アイルランドという地理的空間を対象とした場合、時代や地域によってどのような問題が立てられうるのか、その具体的問いを提示する。
目次 :第1部 植民とブリテン帝国の形成(中世アイルランドにおける「ネイション」意識;ブリテン大西洋帝国におけるアイルランド―帝国国制的観点からみたその周縁性;マンスター、そしてジョージア―国境なき植民請負人としてのアングロ・アイリッシュ ほか);第2部 連合王国への組み込みと複数のナショナリズム(リピール運動の勝者たち―「アイルランド都市法人法」とダブリン商工業者;信仰復興とナショナル・アイデンティティ―「信心革命」の時代における宗派間の対立と交流;アイルランド西部海岸地方は辺境であったか―『貧民蝟集地域開発局視察官ベイスライン報告』(1894年)を手がかりに ほか);第3部 連合王国離脱と脱植民地化の格闘(自治から共和主義への転換点―ウィリー・レドモンド従軍からクレア補欠選挙へ;「アイルランド・朝鮮類比論」の展開―三・一運動後の日本とアイルランド;両大戦間期における産業政策の可能性と限界 ほか)
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