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20世紀の初頭、第一次世界大戦が終わって中央ヨーロッパ、東ヨーロッパを支配していた帝国が姿を消し、それにかわって民族を核として国民国家が成立したとき、民族は輝いてみえた。しかしそのとき成立した国の一つ、ユーゴスラヴィアが20世紀の最後に解体していく過程のなかで生じた民族浄化は、民族への懐疑を深めることになった。歴史の方法論としても民族のもつ虚構性がいわれるようになって久しい。21世紀に世に出る本書の目的は、個を一つの鋳型に押し込めて「民族」を語るのではなく、民族を一度個に還元し、そこから再構成して見えてくる限りでの「民族」を描こうとしたものである。
目次 :序章 新たなバベルの塔をめざして;第1章 東ガリツィアの近・現代 恩讐のの彼方―東ガリツィアのポーランド人・ユダヤ人・ウクライナ人;第2章 国家と向きあう住民の視点 住民社会におけるネーションの意味―オーストリア・ケルンテンのスロヴェニア人をめぐって;第3章 オーストリアの教育と民族 国家と民族のはざまで―コメンスキー・シューレの闘い;第4章 民族音楽研究の磁場 民族の音楽/音楽の民族―コダーイ、クンデラ、そしてモルドヴァのファンファーラ;第5章 農民のことばから国家語へ 民族語の夜明け―近代東欧の言語改革;第6章 「民族」概念がはらむ問題 南ティロールにおける「民族」―「境界」のない世界は可能か?
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